2024年11月19日
久米仙酒造を紡ぐ10人の蔵人-一滴に心をこめる酒造りの蔵人
いつも久米仙酒造をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
「伝統を大切にしながら泡盛の新しい可能性を求めて一歩進んだ酒づくり」をモットーに、業界の常識に捉われず「沖縄から世界へ」新しい挑戦を繰り拡げる久米仙酒造。そんな久米仙酒造を紡ぐ10人の蔵人にスポットをあて紹介していきます。記念すべき第1回目は、ウイスキーの製造に携わる鞍谷駿(くらたにはやと)さんを紹介します。
久米仙酒造に入社して1年目の鞍谷さんは、沖縄県外のご出身。山梨県にあるご実家は居酒屋さんだそうで、日常でお酒を目にする機会が多かった鞍谷さん。大学生の頃からお酒に興味を持ち始め、その頃に出会った日本酒のおいしさに感銘を受けて「酒造りをしたい」と思うようになりました。沖縄に来たのは20歳のとき。沖縄に来てからは、沖縄のクラフトビール屋さんや、久米仙酒造とは別の泡盛メーカーで働いていたそうです。
ウイスキーを追い求めて久米仙酒造へ
―鞍谷さんが久米仙酒造に入社したきっかけを教えてください。
「入社したのは1年前です。前職では別の泡盛メーカーで製造に携わっていましたが、ウイスキー造りに挑戦したいという強い想いから久米仙酒造に入社しました。久米仙酒造の減圧蒸留による泡盛を初めて味わったとき、泡盛とは思えないすっきりとした風味に驚かされました」
―鞍谷さんはお酒ではとくに、日本酒が好きだと伺いました。現在、日本酒ではなく泡盛やウイスキー造りをされていますよね。日本酒の酒造に行こうとは思いませんでしたか?
「地元山梨にいたときから飲む機会が多かった日本酒は、私にとって身近なお酒で、地元近くの酒造所に興味もありました。でも沖縄に来て、沖縄の地酒である泡盛に触れる機会に恵まれたことで、泡盛の素晴らしさを知りました。いま久米仙酒造で触れている泡盛やウイスキーにすごく愛着を感じていることもあり、沖縄の泡盛メーカーに来てよかったと思っています。」
―泡盛やウイスキーの味わいについて言語化するのはむずかしいかと思いますが、テイスティングノートなども書いたりしますか?
「初めて飲むお酒は、だいたい記録や練習としてテイスティングノートを手帳に書いていますね。テイスティングノートの作成は前職の泡盛メーカーに勤めているときから始めて、今では3〜4冊ほどあります。泡盛やウイスキーはもちろん、クラフトビールを飲むときにも記載します。飲みながらメモをとるって感じで、楽しんでやっています。」
作業の大半を占める清掃と発酵管理
―朝早くから出社されているところをよく見かけますが、鞍谷さんの出勤時間ってとても早いですよね?1日のスケジュールはどのような感じなのでしょうか?
「早い時間帯の出勤は日によりますし、交代制なのでそんなに苦ではないですよ(笑)その日の作業がモルトの製造の場合、作業は朝7時から始まります。モルトの粉砕作業や糖化作業製造の一連の工程に加えて、1日のスクジュールの中でとくに時間を割くのが清掃です。」
―清掃ですか。たしかに、酒造りに使う機械をきれいに保つのは大切ですよね。しかし大きな機械なので、清掃も大変だと思います。作業の際、とくに気をつけているところは何でしょうか?
「たとえば、マッシュタン(糖化させる機械)に焦げが少しでも残っていると、次に糖化するお酒に焦げた臭いがついてしまいます。清掃は仕上がりの品質を左右する大切な工程なんです。また、温度管理にも細心の注意を払っています。原材料によってはマッシュタン内で上下の温度差が生じやすいため均一に保つのが難しく、繊細な管理が求められます。スイッチを1つ押し忘れるだけで、タンク内の全てが台無しになることもあります。些細なミスを防ぐため、日々の確認作業を徹底しています。」
お客様の声がやりがいに
―長時間にわたる作業の末、お酒ができあがるのですね。お酒を造る蔵人として、とくにやりがいを感じるのはどんな瞬間なのでしょうか?
「一連の作業が完了したときにももちろん大きなやりがいを感じますが、とくにうれしいのは、手がけた製品がコンテストで賞を受賞したり、お客様からの『おいしい』の声を直接耳にしたりすることですね。よし、もっと『おいしい』を増やすぞ、とやりがいを感じます。」
「また取材しに来てください。」
―取材へのご協力、ありがとうございました。何かお伝えしたいメッセージなどはありますか?
「また3年後くらいに、再度取材に来てくれませんか?いま仕込み始めたお酒が、3年後にはできていると思うので・・・。そのときには、そのお酒をみなさまに知って、飲んでもらいたいです。」
自分が仕込んでいるお酒が数年後どんな味に変化していくのか、その成長を楽しみにしている鞍谷さんの“おいしさを求めた一滴に心をこめる酒造り”の日々は続きます。
次回は味わいの頂点を追求する蔵人
次回は、味わいの頂点を追求する蔵人 松村和幸さんです。鞍谷さんに、松村さんについて尋ねてみると、「松村さんはプロフェッショナルで、厳しさとともに強いこだわりを持って仕事をされている方です。」とのこと。
次回は11月21日(木)、どうぞお楽しみに。